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炎上商法に思うこと。YouTubeが「テレビ化」しない理由

YouTubeには「炎上系」と呼ばれるクリエイターがいる。

それはジャンルとして確立されており、存在することが当然であるかのような印象を与えてしまうが、実際は、単なる迷惑行為であったり、危険行為や誹謗中傷など、社会的モラルを故意に踏み越えて人々の注目を集めようとする利己主義でしかない。

それを ” 才能 ” と称賛する風潮もあるが、誰も万引きを ” 才能 ” とは呼ばないだろう。万引き犯が行ったのは、単に商品をポケットに入れただけなのだから。

記憶に新しいのは、某アニメーション制作会社の放火事件で逮捕された犯人を肯定するような主張を行ったクリエイターがネット上で炎上。少し前には、自身は学校には行かず、YouTubeに不登校を肯定する小学生が、大人たちから「学校に行け」と批判を浴びるということもあった。

ユーチューバーたちが話題性のあるこの小学生を取り上げ、動画内で彼を批判してはいるものの、結果的に小学生は全国的に有名になってしまった。それによってブレイクスルーが起こり、彼のチャンネルは、多分、近いうちに登録者10万人に達するだろう。

こういった売り方を「炎上商法」と言う。もはや、炎上がノウハウ化しているのだ。

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悪口NGへ

ここ最近、YouTube側は、こうした炎上目的のコンテンツを厳しく規制する方針を打ち出している。

YouTube公式の「広告掲載に適したコンテンツのガイドライン」では、「炎上目的、侮辱的」という項目が追加された。

大まかな内容は、不当な炎上、扇動を目的とするもの、他者を侮辱するものは、広告掲載を規制するというものだ。

炎上系クリエイターの中には、社会批判や特定の人物についての「悪口」を売りとしている人たちもいる。巷では「YouTubeで悪口NGになった」と言われ、こうした人たちが一斉に消えてしまうのではないかと危惧する向きもあった。

面白いエピソードがある。某炎上系ユーチューバーが、悪口を封じられてしまったため、表面上は至って普通のコメントをしながらも、仕草や表情によって特定の人物を暗に中傷するというパフォーマンスを動画内で行ったところ、収益化停止のアイコンが表示されたり、解除されたりが、しばらく続いた。

結果的には、収益化停止は免れたが、また、いつ停止措置になるか分からないと言う。YouTube側も判断しかねているようだ。

” 迷惑系 ” の誕生

とあるクリエイターが動画内で、YouTubeの規制が厳しくなっていくことでYouTubeの「テレビ化」が起こり、視聴者が離れていくだろうと話していた。チャレンジ精神が失われ、誰もが当たり障りの無いコンテンツを作るようになるというわけだ。

確かに、登録者が100万、何10万といるクリエイターなら、広告企業に忖度して、当たり障りのない動画を投稿するかもしれない。そこには、大手の所属事務所があり「業界」らしきものがあるだろう。

しかし、底辺には数多くのクリエイターが存在している。彼らが守るのは YouTubeの規約のみで、企業に対する忖度も所属事務所からの指示もない。

そして、YouTubeには、歴然とした格差と優遇措置がある。有名クリエイターの雑談動画が何十万回も再生される一方で、念入りなリサーチと編集によって作り込まれたドキュメンタリー作品が数百回しか再生されないといったことは日常の世界である。

後発組が注目を集めるためには ” 一線 ” を踏み越えなければならない状況をYouTube自身が作り出している。つまり、モラルに従った当たり障りの無い動画を作り続けたところで評価を得る機会はないのだ。

最近では、迷惑行為を行う” 迷惑系 ” ユーチューバーが現れている。なぜ、そのような存在が生まれたのだろう?

テレビのような統一された文化を、YouTube上で醸成することは不可能だ。

YouTubeがテレビを踏襲できない理由

テレビ番組は各テレビ局が厳しくチェックしコントロールしている。一方、YouTubeはAI処理とは言え、全てのチャンネルを完璧にチェックは出来ない。YouTube運営に巨大になりすぎたプラットフォームをコントロールすることは出来ないのだ。

ゆえに、毎年、AIで健全なチャンネルを誤ってアカウント停止にし、規制からはみ出す無法者といたちごっこを繰り返し、著作権、ヘイトスピーチを含む人種差別、性差別、テロリズム、陰謀論、政治的プロパガンダ、違法コンテンツに対処し続けている。それだけで日が暮れてしまうだろう。

そして、今日、開設されるチャンネルもあれば、閉鎖するチャンネルもある。無数に。そこが、テレビとYouTubeの決定的な違いだ。

これまで規制を逃れてきた文字だけのスクロール動画、テレビ番組の盗用動画などが関連に表示され、ルールを守り、けなげに運営されてきた善良なチャンネから機会を奪ってきたと考えれば、規制強化の動きは良いことかもしれない。

とは言え、YouTubeが今後、大きく何かを変えるといったことは無いだろう。十分に成長しきったプラットフォームに変化を求めることはナンセンスでしかない。

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