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「将来世代にツケを回してはいけない」の ” ツケ ” とは借金のことじゃない。

「借金を将来世代に残してはならない」

どこかで聞いたことのあるフレーズ。要するに国の借金は後から返さなきゃいけないという話だ。それは、僕らが返すわけじゃなく、将来世代がそのツケを払うという。

ああ、そうだ。言い忘れたが僕は政治に関しては無関心層に属する人間なので、正直、経済については素人だ。あなたが経済に詳しいというなら、ここから先を読む必要は無いだろう。あくまで経済に詳しくない無関心層が理解した範囲の考察記録に過ぎない。

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最大のミステリー

さて、僕は「将来世代にツケを残す」という言葉の意味が分からなかった。それって、どういうこと?

例えば、親が借りた借金を子供が返すみたいな。そして、その子供が借金を返しきれなくて、また、借金をしてしまい、その膨らんだ借金を孫が返すみたいな感じだろうか。実際、国の借金は増え続けている。

財務省の発表によると2020年度末で日本の借金は過去最大の1216兆46334億円に達した。因みに2020年度の国の税収は過去最高の63兆5000億円(国税庁ホームページ)。コロナ禍で税収が過去最高なのは一部大企業の業績好調を背景にした法人税収と消費税を10%にした効果だ。

この数字から計算すると、単純に税収の全てを借金の返済に充てたとしたら、全額返し終わるのに約20年かかる。もちろん、その間も借金は増え続けるだろうし、予算として支出する分も考えると、もはや、悪徳金融業者に金を借り、利子だけを払い続ける不幸な債務者ような人生だ。

しかし、実際に自宅にまで押し入ってきて、ドアを蹴り飛ばして「おい、居るのは分かってるんだ!」と怒鳴り散らす取り立て屋はやってこない。

ここで疑問だ。誰から借りてるのか? 細かな手続きを簡単に説明すると、

① 政府が国債を発行し、市銀が日銀当座預金を使って国債を買い取る。
② 日銀当座預金を受け取った政府が、市銀に対して民間企業にお金を振り込むよう指示する。
③ 政府は日銀当座預金を国債を買い取った市銀に返す。

ちょっと分かりにくいかもしれないが、要は、政府は市銀から金を借りて、民間企業に支払ったのだ。その後に市銀にお金を返している。(政府と市中銀行の当座が日銀の中にあり、日銀当座預金のやり取りは日銀の中で行われている)

ここで、気がついた人は鋭い。そう、誰も損してない。

政府は市銀から借りたものをそのまま返しているだけだし、市銀も支払った分を政府に返してもらっている。しかし、民間企業は確かにお金を受け取っている。まさにミステリー。

犯人は市銀なのだ。市銀は国債と引き換えに政府に預金を振り込んだ上、さらに、民間企業にお金を振り込んでいる。さて、その分のお金はどこから持ってきた?

僕たちの預金を使ったわけじゃない。市銀が勝手に作ったのだ。端末のキーボードを叩いて。これを ” 信用創造 ” と言うらしい。

・・そんなアホな。嘘だと思うなら自分で調べてみてほしい。

景気は悪いけどダイエット

つまり、日本政府は予算が足りなくて国債という借金をしたわけじゃない。なぜなら、やろうと思えば、いくらでも信用創造できるから。それが、どういうわけか ” 将来世代が返さなきゃいけない借金 ” と言われるようになった。

では、なぜ、政府は国債発行にびびってるのか?

国債を発行することが、後々良くない状況を招くという考えがある。例えば、ハイパーインフレや円の信用が無くなるといったことだ。だから、いずれは清算しなければいけないもの、という意味で ” 借金 ” という呼び方になったのではないだろうか。

例えるなら、食べ過ぎた人が後々太ることを心配して、運動するようなことだ。” ツケを回される将来世代 ” をこの例に当てはめるなら、三カ月後の自分ということになる。言い換えるなら、こんな問いかけになる。

「暴飲暴食ばかりすると、三か月後の自分にツケを回すことになるけど、いいの?」
「今から運動して、カロリー消費しておこうよ」

こう言われると、やはり、国債発行は、いつかツケになって返ってくる危険なことのように思える。ほったらかしにしておけば、それは贅肉になり悲惨なことになると。

ここで景気の話になってくるのだが、日本は20年以上のデフレに悩まされている。つまり、不景気が続いているわけだが、言うなれば暴飲暴食どころか、ろくに食事も取れていないガリガリ状態。栄養失調の人がランニングを始めたら、そのうち眩暈を起こして倒れ込んでしまうのは目に見えている。

ただ、政府は「三カ月後のあなたにツケを回してはならない!」と言って、ガリガリのあなたから食事を取り上げ、カロリー制限しようとしている。多分、三か月後、あなたは立ち上がって一人でトイレに行くことも出来なくなっている。つまり、不景気は加速し、惨憺たる未来が待っている。ある意味 ” ツケ ” が回ったのだ。

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二つの ” ツケ “

ここでちょっと整理してみよう。彼らが恐れる ” ツケ ” とは借金のことではない。なぜなら、市銀から借りた日銀当座預金はそもそも使われてないのだから。問題なのは、国債を発行し続けた結果、悪い事態に発展すること、巷では ” 財政破綻 ” と言われていることだ。

つまり、” ツケ ” は二種類ある。 飴を渋ったせいで経済が弱体化するか、鞭を打たなかったせいで財政破綻するか。

財政破綻を防ぐために飴を渋って鞭を振っているのが今の日本だ。この場合、飴とは財政出動であり、鞭とは緊縮財政だ。政府は後者の ” ツケ ” を回さないために一生懸命頑張ってはいるが、それが前者の ” ツケ ” を回す結果になることは想定していないようにも見える。

既に僕たちは、緊縮財政による長期のデフレによって疲弊した社会に生きている。つまり、前者のツケが僕たちに回ってきているのだ。これは、現実に目の前で起こっている ” リアル ” だ。では、後者の ” ツケ ” は、どうだろう?

膨らみ続ける借金と20年以上続くデフレの日本で財政破綻が起こっただろうか? 一度も。

経済に素人の僕ですら、こう思う。太り過ぎになるのを恐れるのは分かるが、今の君は太ってない。むしろしっかり食べて体力をつけるべきだ。それは、健康になった後で心配することだと。

きっと、何不自由無く生活し、十分な収入を得ている政治家や高級官僚には、僕たちの疲弊はデータ上の数字でしかなく、不景気である実感が無いのだろう。太ることを心配するぐらいなのだから。

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