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YouTubeムーブメントの終焉について考えてみる。(1)

最近、YouTubeをあまり見ていない。

と言っても、YouTube自体にアクセスしなくなったわけではない。アクセスはしているのだ。ただ、トップページにリストアップされているサムネイルの一覧をしばらく眺めてから引き返すことが多くなった。

ネット上で何かムーブメントが起こり、しばらくすると、必ず「オワコン説」というものが出てくる。それは、単に時代の風潮に逆らったことを主張して注目を集めたい者から始まる。ここでは、真面目に、YouTubeムーブメントの終焉について考えてみたい。

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YouTubeはオワコンになりつつあるのか?

まず、YouTubeがオワコンだという話は、僕の知っている限り、まだ、出ていない。世界のどこかで誰かが呟いたかどうかは知らないが。事実、2019年の芸能人大量参入がYouTubeという市場への期待感を示している。

有名なチャンネルのいくつかでは、YouTubeは今後さらに規模拡大していくだろうと予測を立てている。

仮に、このタイミングで「YouTubeオワコン説」を主張したところで、誰も耳を貸さないだろう。そして、YouTubeは多くの人の予想どうり、今後、より成長していくはずだ。

ただし・・それは、YouTube全体の話だ。問題は、個々のチャンネル、個々のクリエイターの活動がどうなっていくか、ということだ。

実際、クリエイターの数が増えようと、それによってエンターティメント市場やゲーム実況市場がレッドオーシャン化しようと、YouTube本体の運営には何ら影響はない。

数少ない優良チャンネルが莫大な利益を得ようと、数多くの小さなチャンネルが競合し利益を取り合って赤字になろうと、YouTubeはその全体から決められたパーセンテージの取り分を得るだけだからだ。

そして、YouTubeにとってコンテンツクリエイターは、社員でもなければ、大切な取引先でもない。クリエイターが困窮したとしても何ら保証する責任はない。むしろ、市場がレッドオーシャン化した方がクリエイターが潰れても、替えが効くという意味でYouTubeにとってはメリットなのだ。

YouTubeがコンテンツの買い手ならば、クリイエイターは売り手となる。売り手が多くなるほど、コンテンツの価値は下がり、買い手が優勢となる。後は数多くのクリエイターが血と汗で作りだしたコンテンツの中から、上位数パーセントの優れたものだけをチョイスすればよい。

ある意味、YouTubeバブルは、ムーブメントではなく、YouTubeの仕掛けた戦略の一環だったのかもしれない。クリエイターが儲けやすい状況をあえて作り、大量の参入者を呼び込み、コンテンツ全体の価値を下げるという。

即ち、ひしめき合うクリエイターの置かれた過酷な状況は、YouTubeにとっては単なる「コンテンツの充実」に過ぎない。

単純な市場原理だが、YouTubeが望んでいる未来も、結局、そういうことなのだろう。

つまり、コンテンツの飽和を目指している。そして、YouTubeの思い描く素晴らしい未来は、近いうちに100%の形で実現するだろう。そもそも、ルールはYouTubeが決めているのだ。実現しないわけがない。

・・という意味で、YouTubeがオワコンになることは無い。

先行者優遇のインターフェース

では、個々のクリエイターはこれから何を選択していくべきだろう?

この質問は、そのクリエイターにとって、YouTubeがどういった役割を果たすのかによって違ってくる。多分、多くの参入者が想定しているのは、動画投稿を続け、広告収益によって生計を立てるといういわゆる職業としてのパターンだと思う。

やはり、今後は、すでにシェアを取っている先行者、そして、数多くのクリエイター同士の熾烈な争いの中で勝ち抜いていかなければならない。例えば、トップクリエイターの動画を参考に、同程度のクオリティであればある程度のアクセスを見込めるかと言えば、現時点では、難しいのかもしれない。なぜか?

YouTubeというプラットフォームは、先行優位性が強く働き、後発組には厳しい世界だ。それは、チャンネル登録という機能やトップページの状態からも分かる。トップページでは ” おすすめ ” として、あなたが見た動画に関連した動画がリストアップされているはずだ。アップロードされたのが数か月前だろうと、数年前だろうと。

あるチャンネルの動画を一つ見れば、同じチャンネルの過去動画を薦めてくる。まるで、視聴したチャンネルの過去アーカイブ全てを私たちにチェックさせようとしているかのようだ。そして、なぜ、こうなっているのか疑問なのだが、以前見た動画がトップページに再表示されるという仕様だ。

「あなたが視聴した動画をもう一度見てみませんか?」とでも言っているのだろうか?

類似した動画をリストアップすることが出来るなら、一度見た動画を表示せずに、その枠に新しい動画を表示することも出来るはずだが、こうした仕様が後発組から ” 入り込む余地 ” を奪っているのだ。

AIが過去視聴したデータから、ユーザーの嗜好を割り出して最適なものを薦めているのだろう。それが、結果、視聴者を同じチャンネル、同じカテゴリーに拘束する仕組みとなっている。

もちろん、トップページからアクセスをする必要はなく、視聴者はキーワードを入力して、動画を自由に検索することも可能だ。

・・・果たして、検索するだろうか?

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映像コンテンツの消費のされ方

僕の場合、「さて、YouTubeでも見るかな。何があるだろう?」という軽い動機でYouTubeにアクセスすることが多い。ただ、冒頭でも話したように、トップページの驚きも新鮮さも無いサムネイルリストを見て、ブラウザを閉じる。

Amazonプライムでも同じ状況だ。いちいちキーワードなど入力しないし、トップページに表示されている映画の中から「何があるかな?」という探し方をする。よほど気になっていた映画のタイトルを覚えているならば検索するかもしれないが、通常はそういった使い方はしない。

映像という媒体は、情報検索という側面より、エンターティメントとして消費されることの方が多い。テレビで何かしらやっている番組の中から見たいものだけを見る。というのが映像の消費のされ方だ。

もし、テレビをつけた時、最初の画面でキーワード入力を求められたら、多分、何を入力したらよいの分からなくなるだろう。

Googleのトップページは、シンプルにキーワード入力欄だけが表示されている。検索される対象が映像ではなく、大抵は、静的ウェブページ、テキストだからだ。

例えば、とあるユーザーがWindows10のブルースクリーン問題を解決するためにGoogle検索をしたとする。その後、再びGoogleトップページに行くと、同じウェブサイトの別の記事、Windows10の壁紙設定の記事をおすすめ表示したりはしない。そのような無関係な情報を表示することに意味はないからだ。

検索するユーザーは、ブルースクリーンを解決する情報が欲しかっただけであり、その記事を誰が書いたか、どこのウェブサイトか、というようなことに関心はない。

YouTubeのトップページの構成を見れば、運営側が人々がどのようにして映像コンテンツを消費するのか、キーワードで積極的に探しに行くよりも、プッシュされた動画を見続ける視聴者の性質を十分に把握していることが分かる。

「チャンネル登録機能」に至っては、言うまでも無く、露出スペースを占有するための ” 囲い込み ” だ。

この機能によって、コンテンツクリエイターの影響力を容易に推し量ることができ、視聴者を同一のチャンネルに足止めしやすくなる。ファンを醸成しやすい環境を提供しているのだ。それは、コメント欄の多くのコメントを見れば分るだろう。

要するに、YouTubeはプラットフォームの中で ” アイコン ” を作り出そうとしている。それは ” 憧れ ” となり、新規参入者の動機となる。

2014年にテレビCMにもなった「好きなことで生きていく」というYouTubeの打ち出したキャッチコピーは、つまり、そういうことだ。全ては新規参入者を惹きつけ、コンテンツを拡充させるため。

いずれにせよ、このプラットフォームは、視聴者に一度受け入れられたコンテンツは、そうでないコンテンツよりも優遇され、露出しやすいという性質がある。

ブログムーブメントの衰退

さて、先行者が優遇されているとは言え、後発組でも短期間で多くの登録者を獲得できるケースもある。

芸能人が大量参入した2019年、某アイドルグループが開設したチャンネルで「1日で100万人登録突破」というニュースがあった。しかし、実際、それは1日で成し遂げられたわけではなく、テレビでの長い芸能活動を経て、十分に認知されている結果に過ぎない。

要するに、認知されるための期間という意味では、芸能人は、YouTubeを軸に活動しているトップユーチューバーよりも、長い歴史があるわけだ。なので、これから新規参入しようとしている者にとって、他分野からやってきたすでに知名度のある人々のサクセスストーリーは、何の指標にもならない。

とある有名ユーチューバーは動画の中で、現時点で素人が新規参入するのは厳しいという見方を示し、今後はクリエイター向けのコンサルタント業が盛んになっていくだろうという予測をしている。新規参入者はプロの指導を受けなければ競争に打ち勝つことが出来ないと言う。

僕は、その動画を見ていて気づいた。「ああ、ブログと同じ流れだ」

そう、歴史は繰り返される。僕は今回のYouTubeというムーブメントを眺めながら、ブログビジネスの隆盛と衰退のプロセスが、ここでも再現されているようにも思えたのだ。

確かに過去、ブログというムーブメントがあった。

アフィリエイトやアドセンス広告といった形で収益化を図り、多くの収益を得る有名ブロガーが誕生した。そういった個人ブロガーたちが ” アルファブロガー ” と呼ばれた時期もあった。(2004年に掲載されたアメリカの雑誌『ニューズウィーク』のコラムが語源。もはや、死語となっているが)

彼らの成功を見た多くの人々が、元々、敷居の低かったブログという世界に雪崩のごとく参入していった。そして、その後起こったことと言えば、容易に想像できるだろう。

ブログ業界がレッドオーシャン化し、収益が低下しつつあったブロガー、とりわけビジネス思考を持ったブロガーの中には、一般人向けの記事を書くよりも、金の匂いを嗅ぎつけて大量に流入してきた新規参入者に向けて情報を発信することが得策だと考える者もいた。

つまり「成功したい人々をカモにする」という成功ノウハウ市場の誕生だ。

「あなたも月収100万も夢ではない」という触れ込みでブログに誘導し、メールマガジン登録を促し、そして、高額な参加費を必要とするビジネス講座、情報商材、個人レッスンなど、いわゆるコンサルタントサービスを販売するという手法が確立した。

現在、YouTubeというプラットフォームでも、にわかに、そういった動きが見られる。もし、今後、コンサルタントが流行り出したら、それは、ムーブメントの衰退を知らせる ” 鐘 ” なのかもしれない。

ブログ業界はどうなったのか?

確かにプロが介入し、適切な指導を受けることで、全くの素人クリエイターよりは、優位な立場に立つことはできるだろう。もしかしたら、全員ではないが、その一部は成功を手にすることが出来るかもしれない。ただし、全体の流れで言えば、多分、ブログムーブメントと同じ末路を辿ることになるだろう。

では、ブログ業界はどうなったのか?

その後、成功ノウハウ系コンサルと名乗る人々が無数に現れ、新しく生まれた市場のシェアを奪い合い始めた。

彼らが販売している商品は「成功するためのノウハウ」だ。それで成功できるかどうかは別として「さあ、ブログを始めて大金を稼ごう」といってブログノウハウを教えるわけだから、必然的に同業者が急速に増加。彼らは、自らの商品によってライバルを量産し、自分の首を絞めることになった。

やがて、成功ノウハウ系ブロガーたちは収益を上げられなくなり、SNS、特にTwitterへと軸足を移していった。Twitterとブログは、もともと親和性が高いメディアなので移行は必然だったのだろう。両方を使いこなしながら活動を続けている者もいる。

そして、今回のムーブメントに目をつけた者たちが、YouTubeというプラットフォームを選択した。

さて、ブログとYouTube、二つのメディアの性質は違っている。

先ほども説明したとおり、静的ウェブページと動画コンテンツは消費のされ方が違っている点が一つだ。Googleの検索結果上位にYouTubeの動画が表示されることがあるが、正直、僕は検索結果として動画が見つかったとしても、ほぼクリックしない。

以前、とあるゲームの攻略について検索したことがあった。検索結果に動画が表示されており、キーワードがタイトルに含まれていた。ただ、その動画は1時間を超えるライブ配信動画だった。

1時間の動画の中から、自分の探している情報を探せというのだろうか?

動画としての情報を探しているなら、ユーザーはYouTubeに直接アクセスするだろう。Googleは動画コンテンツを検索結果と融合することに固執する必要はないと思うが・・

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