交易により都市を発展させていくストラテジーゲーム「トレード・エンパイア ( Trade Empires )」 は、アメリカ、サンフランシスコに拠点を置くゲームメーカー Frog City Software が開発を手掛け、2001年にEidos Interactive によって発売された。
開発元となる Frog City Software は、トレード・エンパイア の他にも「帝国主義 ( 1997年 ) 」「トロピコ2:パイレーツコーブ ( 2003年 ) 」など、ストラテジー系のゲームを中心にリリースしている。
Frog City Software は、1994年、レイチェル・バーンスタイン、ビル・スピース、テッド・スピースの三人によって設立された。そして、2003年、トロピコ2をリリースした後、Take-Two Interactive に買収され、2005年、K2レーベルの傘下に入り、その年の終わりに閉鎖された。
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「ホットコーヒー論争」の影で
2006年、Frog City Software はとあるゲームを開発していた。麻薬密売をテーマに取り扱ったゲーム「snow」だ。ただ、このゲームはお蔵入りとなっている。
当時、ゲーム業界ならず政界までもを巻き込んだ「ホットコーヒー論争」の余波を受け、あえなくリリース中止となってしまったのだ。
では、アメリカで巻き起こった「ホットコーヒー論争」とは、一体、どういったものだったのか?
今やビッグタイトルとなったバイオレンスアクションゲーム「グランド・セフト・オート ( 略称:GTA ) 」シリーズの開発元ロックスターゲームズが、2004年、シリーズ5作目となる「グランド・セフト・オート サンアンドレアス」をリリースした。
本作のゲームストーリーの中でガールフレンドにコーヒーブレイクに誘われるという場面があり、承諾すると直接描写を避けた形で性行為が行われる。
実は、「サンアンドレアス」には、行為そのものを直接描写した隠しミニゲームが内蔵されており、とある改造Mod製作者がロックを解除する方法を見つけ出したのだ。それを、Modとして世界中に公開した。
それは、瞬く間に多くの人にダウンロードされ、社会問題へと発展。アメリカ議会ではビデオゲームに対する規制を強化する法案が提出される。この事件によって、ロックスターゲームズは世論からバッシングを受け、対応を迫られた。
もし、ロックスターゲームズが「サンアンドレアス」に猥褻なミニゲームを仕込まなければ、もしかしたら論争は起こらず、「snow」は日の目を見ることが出来たのかもしれない。
「トレード・エンパイア」とは何だったのか?
Frog Ctiy Software の創立者の一人、レイチェル・バーンスタインは、同社閉鎖後、2007年に Electronic Arts ( 略称:EA ) に入社し、EAのゲーム部門であり、「ザ・シムズ」シリーズで有名な Maxis のエグゼクティブプロデューサーに就任。
2013年には、Google Android Play Studio のエグゼクティブプロデューサーを務めた。
「トレード・エンパイア」は、レイチェル自身が開発を監督している。このゲームを「シヴィライゼーション」シリーズの亜種と評価する向きもあるが、ターン制ではなく、どちらかと言えばリアルタイムストラテジーと言った方がよいかもしれない。
ただ、有名なリアルタイムストラテジー、例えば、「エイジ・オブ・エンパイア」のように、小さな兵士たちを動かし、隣国と戦争を行って領土を奪い合うというような要素はなく、ロバに乗った行商人が都市を行きかい交易をする。
地図上のシルクロードを往復する行商人、各都市で自動的に農作物が生産され消費されていく。時間は刻々と時を刻み、その中でプレイヤーは限られたリソースをコントロールし、出来るだけ利益を上げるというマネジメント色の強いゲームだ。
Android Play Studio のエグゼクティブプロデューサー就任というキャリアとしては成功者と言えるレイチェル・バーンスタインが、若き頃、Frog Ctiy Software というベンチャーを立ち上げて、そこでコードを書き続けた。
彼女は、一体、どんな思いでこの「トレード・エンパイア」を開発したのだろう?
レイチェルの残したもの
最初にプレイして分かるのは、古代商業発展の歴史について相当の知識がベースなっているということだ。つまり、僕のような歴史に無知な一般人が、すぐに楽しめるようなエンタメ向けの設計にはなっていない。
今、メインストリームで世界でプレイされているゲームのほとんどは、直感的操作でコントロールできるものばかりになっている。三次元のFPS系ゲームのように前進、後退、右、左、マウスクリックで射撃、もしくは、スーパーマリオのように左右スクロールとジャンプなど、だいたい似たような操作を行う。
僕から見ると、どれも同じに見えてしまい目新しさを感じることが出来ないのだが。
商業的にはそうしなければ売れない、というのは理解できるが、それ以外の「玄人に好まれるタイプ」のゲームが、売り上げを伸ばすことが出来ずに消えていくとしたら、ゲーム業界全体が、自らの首を絞めているようにも思える。
「トレードエンパイア」には、若きレイチェルが培ったビジネス論、マーケティング論のようなものが、古代史をベースに再現されているようにも見える。
本作は、ゲーム業界でビッグタイトルになることは無かったが、エンジニア、そしてマネジメントとして大成した彼女が、ソースコードという形で僕たちに書き残した一冊の「ビジネス書」だったのかもしれない。
後記
僕の手元には「トレード・エンパイア日本語版」がある。動作環境はwindows XPだが、windows7でも動作するようだ。今、7は、XP時代の旧作ゲームのための専用機となっている。本作の日本語化に尽力してくれた株式会社マイピックの制作スタッフには感謝したい。
すでに販売終了となっている「トレード・エンパイア」実は、海外のダウンロードサイトで英語版をダウンロード出来るようだ。ただ、ゲームの権利関係が不明 ( 海賊版の可能性もあり ) 、海外のウェブサイトなので信用面に不安がある。ここにリンクを張ることは差し控えたい。
[ 参考文献:Wikipedia ]
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