「YouTubeが儲かるビジネスだ」という認識が、社会一般に浸透してしまったわけだが、それが多くの参入者を呼び込んでいる。
現在、123万人の登録者がいる芸能人ユーチューバーとして有名なカジサック氏は、動画の中で芸能活動よりも儲かると語っている。彼の成功は、芸能界から知名度のある芸能人がYouTubeに流入していくきっかけを作った。今後も、間違いなく芸能人の参入は増えていくだろう。
さて、YouTubeという市場は、今後どのような形になっていくのか?
市場拡大か、クリック率減少か?
なぜ、今、YouTubeが熱いのか? それは、儲かるから。
という話なのだが、そもそも、なぜ儲かるのか?ということについて考えてみよう。
それは、単純に動画がたくさん再生され、そこに表示された広告がポチポチクリックされるからだ。今だデフレ不況から脱することが出来ない日本で消費税増税が実施される。消費者の心理はこれまで以上に冷え込むはずだ。
だから、企業が広告を出してもそれがクリックされる率は、個々のバラツキはあっても全体としてはこれから下降していくだろう。5GによってYouTube市場が拡大すると言われてはいるが、それに反比例して全体の広告のクリック率は下がっていく。普通に考えればそうなる。
消費者一人一人が広告をクリックしなくなったとしても、動画を見る人口が増えれば、全体でのクリックされる数は維持、もしくは増加する可能性はある。人口の増加がクリック率の減少をカバー出来ればだが。
もう一つの「デフレ」
クリエイターの収益は、もちろん、広告主によって支えられている。
企業がYouTubeに広告を出す理由は、広告を出すコストに比べ、クリック率が高く消費者に届きやすいから、つまり、ブログやウェブサイトよりもクリックされやすいからなのだが、なぜ、そうなっているのか? ブログやウェブサイトが氾濫しているからだ。YouTubeクリエイターよりも、ブロガー人口が多いことは誰が見ても分かるだろう。
これはブログやウェブサイトに対するアクセス需要が落ちたというより、そうした静的コンテンツの多さが問題なのだ。つまり、需要に対して供給過剰な状態になっている。まさに「ネット情報デフレ」が起こっている。
YouTubeの視聴時間にウェブサイトの閲覧時間が奪われ、アクセス需要が落ちるという考えもあるが、この二つのメディアはネット上における役割が違っているので、それほど影響しているとは思わない。それを言うなら、スマホゲームやテレビも同じく競合になる。
神の見えざる手
普通のウェブサイトよりもクリックされやすいとすれば、どの企業もYouTubeに広告を出したがるだろう。
しかし、そのクリック率の高さがクリエイターの人口、つまり、動画コンテンツの供給量がまだ少ないから、という事実に支えられているとしたならば・・・
今後、多くのクリエイターが参入し、コンテンツ供給量がそれに対する需要を上回った時、どうなるかは明白だ。
企業が広告を出しても、広告費の割にクリックされなくなったとしたら、彼らは広告費に見合った他の出稿先を探すことになる。再び静的コンテンツに回帰する企業も現れるかもしれない。
つまり、「今」YouTubeビジネスが儲かっているのは、シンプルに供給量が需要に比べて低い、インフレ状態にあるからで、そういった意味では、儲かるかどうかは、結局、市場原理の基本、需要と供給のバランスにかかっていると言える。
今後、5GによってYouTubeに対する需要がどれぐらい拡大するのか、どれぐらい参入者が増えるのか、YouTubeの動向を予測するにはその見極めが必要だろう。
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