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FX系ブログ・ウェブサイトの思惑。検索エンジンを利用して

僕は ” FX ” というものにそれほど関心が無かった。ただ、ネットサーフィン中にそういった投資系ブログが目に入ることがある。どうやらFXをシュミレーションゲームとしてお試し運用出来るウェブサイトがあるらしく、ブログのネタになるかもしれないということで会員登録することにした。

それは、あくまでシュミレーション上の取引で、初期設定では投資資金として500万が用意されていた。その軍資金を元に取引を始めることになる。

FXのシュミレーションを始める前に、FX関連のウェブサイトを検索すると「誰でも始められる」「隙間時間で始められる」「少額資金でもOK」という敷居の低さをアピールするサイトが上位を占めていた。

「FXは危険だからやめた方がいい」というような否定的な記事は、検索順位の最下層に押し込められており、それも個人がレンタルサービスで運営する小さなブログばかりだった。

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検索エンジンの” 公平性 ” が作り出す情報の偏り

一見すると、GoogleがFXを推奨しているかのようにも見える。多分、FX関連サイトのほとんどはアフリエイト目的のために作られており、SEOを駆使し、ユーザビリティに配慮したデザイン、しっかりとした作りのウェブサイトになっているので、それが検索エンジンに評価された結果なのだろう。

確かに「さあ、あなたもFXを始めよう!」という肯定的な記事ならアフリエイトに誘導して収益化できるが「FXは危険だからやめろ」という否定的記事を書いている傍らFX広告を載せるわけにはいかない。

収益化出来ない以上、必然的にメンテナンスも行われなくなり品質は低下する。つまり、収益化出来るか、出来ないかの差が、ウェブサイトの品質の差となって表れている。

要するに検索エンジンには、商業的なウェブサイトを優遇しがち、という偏ったアルゴリズムが働いている。極端な例で言えば、文法が無茶苦茶の真実よりも、AIが解析しやすい整えられた嘘に高い順位を与えるわけだ。

AIは単にウェブサイトの ” 品質 ” を判断しているだけで、真偽を判断しない。例えば、近年行われたアメリカ大統領選挙なら、Googleはどちらの候補も公平に扱う必要がある。バイデン陣営のウェブサイトをトランプ陣営のウェブサイトよりも上位表示させるわけにはいかないのだ。

しかし、システム上、どちらかが上になるのは避けられない。( 検索されるキーワードにもよるが )ゆえに、検索エンジンは真偽を判断するという部分を放棄する。それが、Googleの ” 公平性 ” なのだ。

この真偽の判断を放棄することで保たれている ” 公平性 ” が、皮肉なことに、事実よりも商業主義を優遇する結果をもたらしている。

話が少し逸れたが、要するに検索結果のFX情報は、そういった意味で上位表示されている可能性はある。

信用させるための巧妙なテクニック

では、具体的な部分に話を進めていこう。検索上位に表示されたFX関連サイトの中には、実は否定的な意見もしっかりと入っている。ただ、それは広告へ導くための ” 前置き ” ではあるが。

まずはFXのリスクを解説し、専門的な知識を絡めながら、そのリスクを回避するためにはどうしたらよいかを丁寧に説明する。そして、最終的にアフリエイトに誘導。読者の心理を上手く利用した高度なテクニックだ。

簡単、 安心、 儲かる、といったポジティブな言葉を並べて、やたらFXを勧めてくる記事には疑いの目が向けられる。読者の中に ” 世の中そんなに甘くない ” という固定観念があるためだ。

FXに潜むリスクの説明から入ることで、読者はこう思う。

「このサイトはお金儲けよりも、僕たちに正しい情報を伝えようとしている親切なサイトだ」

入口で読者を信用させ、次のステップでは専門的な解説を付け加えることで「このウェブサイトは本当のことを言っている」とより信用度を高める。

そして、最後のステップでリスク回避のための秘訣を伝授し、FXに対する不安を払拭して広告を踏ませる。

ただ、問題なのは、その ” リスク ” についての説明だ。僕も、それを読んでいて最初のうちは納得していた。しかし、シュミレーションを始めてから一カ月ほど過ぎた時点で、とある疑問が浮かんだ。

「もしかして、あのサイトは重要なことを伏せているのでは?」

では、その言説とは、一体、何か?

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仮想的衝撃

FXで失敗する人の特徴として挙げられることに「損切りが出来ない」という理由がある。

これは、株式投資でもよく言われることだが、要するに、株価がずるずると下がっていくのに「もしかしたら、また上がるかもしれない」という間違った期待感によって、なかなか売ることが出来ないという膠着状態を言う。FXは為替取引ではあるが、やはり、そういった心理は働くようだ。

そして、もう一つの理由は「欲を張って大金を突っ込んでしまう」ということだ。

この二つの心理的理由が ” リスク ” として挙げられることが多いのだが、これを見た読者は次のように思うだろう。「結局は気持ちの持ちようだ。欲張ったら痛い目に合う。実直さこそが成功する道だ」と。

派手さを嫌い、質素であることが善という日本人の美学にストンとはまる帰結。日本人はこういった仏教的な教えに弱い。もちろん、アフリエイター側はその心理を利用する。

では、欲張らずに実直な姿勢でのぞむことが、嘘とでも言うのだろうか?
それが、必要であることには変わりないだろうと。

ここからが本題だ。

僕も最初はそう思っていた。実直な投資を心掛けさえすれば、大きく儲けることは出来ないが、それなりの成果を見込めるのだと考えていた。そう思いながらFXシュミレーションプログラムを開始した。

開始時、まず、仮想口座には500万の運用資金が入っていたが、それは、僕にとって非現実的な金額だ。FXに500万も投入出来るようなゆとりのある人生を送っていない。

少額でも始められると謳い文句にもあったように、現実的には10万ほどからスタートした方が良いだろうと考えて、10万円分のドルを購入した。

その頃、ドルは小刻みにジグザグを繰り返してはいたが、全体としては緩やかに上昇しており、値動きの激しい他の貨幣よりは安定しているように見えた。

1週間ほど、毎日、価格をチェックしていたが、何だか動きが無いまま時間が過ぎていくだけなので、途中から放置するようになった。損失を出したとしても仮想資産を失うだけだという安心感があった。

1カ月が過ぎた頃、久々にチャートを確認すると、価格は一カ月前と大して変わっていなかった。金額としては数十円の利益。FX経験者から「そんなもんだよ」と言われてしまいそうだが、僕が衝撃を受けたのは、このブログの利益率よりも低かったという点だ。

つまり、FXよりもブログの方がマシだったという・・・

” 気軽さ ” の意味

ある程度のリスクを受け入れて投資を行うのだから、リスクも軍資金も必要ないブログよりは良い結果が出ると考えていたが、どうも違うらしい。( 因みに、このブログの1カ月の収益はジュース一本ほどだ )

「いやいや、それは君のやり方が悪かったんだ。もっと勉強しろよ」

ベテラン投資家は言うかもしれない。確かに僕は不勉強だった。もしかしたら、欲を張って10万円を失っていたかもしれない。

ただ、FXを始めようとしているビギナー向けのウェブサイトが作り出した「気軽に始められるFX」というライトなイメージは、最も重要なメッセージを伝えていないように思える。

それは「気軽には始められるが、大して稼げない」である。隙間時間を利用し、少額で始めることは可能だが、そんなセコセコした運用ではジュース代ぐらいしか稼げないというリアル。

むしろ、トレンドが突然下降を始めるかもしれないと、毎日、ビクビクしながらチャートを監視し続けることを考えると、普通にアルバイトをしている方が稼げる。要するに、労力に対して ” 割に合わない ” のだ。

もし、FXで満足な利益を上げようと言うのなら、相応の知識、経験、情報収集力、そして、ある程度の軍資金が必要になる。シュミレーションの開始予算が500万だったのは、結局、「少額でFX? バカじゃねぇの? 普通500万ぐらいいるだろ」という意味で設定された金額なのだろう。

つまり、庶民にとってFXの敷居は低くない。高いのだ。

気軽に出来るのは、会員登録手続きと、アプリの使い方、それからクレジットカードの登録画面操作だ。画面をタッチさえすれば誰でも知識ゼロで取引を開始できるという意味の ” 気軽さ ” であって、FXによって利益を出すことが簡単だという意味ではない。

こうして、僕のFX仮想体験は終わった。

一線を越えさせるために

FXで失敗する人は、なぜ、失敗したのか? ここまで来ると何となく見えてくる。

彼らは欲張った結果、大きな資金を投入して足を踏み外したのではない。大きな資金を投入しなければFXがまともな利益を上げられない仕組みに気づいた結果、やむなく投入金額を上積みしていった。欲ではなく、あまりに悪い効率を改善しようとした・・・ということなのかもしれない。

ここでFX系ウェブサイトが、リスクとして挙げた二つの理由を振り返ってみたい。
「損失を受け入れられない」そして「欲を張る」キーポイントは、どちらもメンタル次第という点だ。

つまり、FXの広告を踏ませたいアフリエイターは、こう言いたいのだ。
「そのリスクは、あなたの気持ち次第で回避できる。あなたが判断を誤らなければFXは安全です」

普通、誰もが「自分はいつも冷静だ」と思っているものなので、大抵の人はFX失敗の原因がメンタルの問題であると聞いてこう思う。

「ああ、それなら自分は大丈夫だ」

もし、失敗の原因が、一日中チャートに張り付いていなかったとか、分散投資するだけの余剰資金が無かったとか、プロに委託していなかったというような現実的な理由なら、怯えた ” カモ ” たちは、敷居をまたいでFXの世界には飛び込まないだろう。

だから、アフリエイター側は、庶民が1円もかけずに解決できるものを原因にすることを思いついた。” メンタル ” という。

残念ながら検索エンジンのAIは、こうした商業主義によって仕組まれる ” 心理戦術 ” を見破ることができない。そして、僕たちに向けて、誤った情報を上位表示し続けている。

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