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「ギブ&テイク」は幻想か? 結局、クラウドファンディングって・・

2017年8月、西野亮廣氏が五反田まで帰る電車賃300円をクラウドファンディングサービス「polca」で集めるという企画を立ち上げ、結果、14万円の支援金が寄せられたという。

西野氏はクラウドファンディングは「信用を換金する装置」と言う。多分、彼は本当に電車賃を奢ってもらうために、この企画を考えついたわけではなく、クラウドファンディングの凄さを実験したかったのだろう。

彼が言うには、世の中にギブをし続けることで、それが信用として積み重なりクラウドファンディングでお金として返ってくる・・・             

本当にそうだろうか?

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クラウドファンディングって結局は・・

「お金が集まったのは芸能人としての知名度があったからだ」という反論に対し、西野氏は実際にクラウドファンディングで資金調達に失敗した有名人の例を挙げ、次ようなことも言っていた。

芸能人は仕事のために嘘をつかなければならないから、結果、信用されない。信用度と知名度は違うと。

ただ、次のような見方も出来る。有名な女優が化粧品のCMをしているとして、その商品は有名人の好感度によって売れる。その有名人がそれを使っていなかったとしても。だから企業は広告を打つのだ。

有名人が出演料を貰いCMという形で商品を紹介し、それを見た人はその商品を買う。クラウドファンディングは、誰かが商品を作りたいから支援金を集める。商品が出来ればそれを支援者に還元する。

こう考えたらどうだろう? 支援者は商品を予約購入しているのだと。つまり、商品がすぐに手に入るのか、後から手に入るのかの違い。

支援者は、結局、買っているのだ。何かを。

無償の寄付

例えば、次のような見方もあるかもしれない。いつも世話になっているあの人が、polcaで支援金を募っているから寄付してあげよう。

これは、単に「後払い」だ。

正確には返す義務の無い後払い。恩とは、ある意味、暗黙のうちに取り交わされた借用書のようなものだ。つまり、テイクとギブのタイミングが前後するか、そして、支払い義務が生じるか生じないかという違いに過ぎない。

遠く貧しい国の子供を支援するためにユニセフ募金をする場合、テイクは完全に期待されていない。そういった意味では、クラウドファンディングは寄付とは一線を画す。

” 恩返し ” と聞けば美しいが、実際は商品をタダで受け取った人が後払いをしているだけだと考えると、大した美談でもない。

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商品と信用の関係

クラウドファンディングは、” 信用 ” をマネーに変換する装置なのか?

信用とは商品に含まれるものであり、それだけを切り離すことは出来ない。スーパーの果物コーナーに並ぶリンゴは、単にリンゴを売っているわけではない。消費者が安心して食べられるという ” 信用 ” が担保されているのだ。

クラウドファンディングは、信用そのものがマネーに変換されているわけではなく、” 見返り ” という商品に ” 信用 ” が含まれているだけだ。

クラウドファンディングは、一見すると寄付のような利他精神によって支えられているように見える。ならば、シンプルに寄付としてお金を集めればよい。

なぜ、寄付ではなく、わざわざクラウドファンディングなのか? 冒頭に戻って考えてみよう。西村氏がpolcaでなく、ブログサイトで寄付を募るという方法で電車賃を集めたら、同額を集めることが出来ただろうか?

結局は、ライブ配信者に視聴者が投げ銭をするのと同じだ。それは、お気に入りのライバーの ” リアクション ” という商品を買ったに過ぎない。

壮大なる商業実験

与える人であり続ければ、信用が積み重なり、やがてリターンがやってくる。いや、リターンを期待して人々にギブすること自体が誤りだ。真のギバーになれば結果はついてくる・・・

という見方には、少し距離を置きたい。この主張は一見、美しくも見えるが世の中それほど単純でないのも確かだ。

2007年、RADIOHEADという英国のロックバンドが新作アルバムをリリースする際に、価格を購入者が自由に決められるという大胆な戦略を取った。

結果、公式サイトにアクセスした人は120万人。そのうちの62%が無料ダウンロードだったという。38%の人はお金を払ったが、そのうちの17%が1セント~4ドルで購入。CDの小売価格は12〜15ドル、iTunesストアでは、大半のアルバムは9.99ドルで販売されている。

世界規模では、ギバーが必ずしも成功するとは限らない。小さなコミュニティの中でならpolcaのような方法で資金調達は可能かもしれないが、結局、近所付き合いの範囲だ。後は、どれだけの人数とコミュニケーションを取れるのかという問題になる。

流行りの思考法

西野氏がクラウドファンディングで資金調達に成功する理由は、彼がSNSやイベントを通して、多くの人と積極的に関わり、人脈を作ってきた結果なのだろう。

ただ、ギブとテイクの比率がどうとか、ギバーであり続けることが成功の鍵だとか、「ギブ&テイク」という型にはめて、成功の図式を理解しようとする風潮は返って固定観念にもなりうる。

起こっていることは凄く単純だ。

良いコンテンツがあり、それを知る機会を作り、正当な対価で提供する。インターネットを使うことで目新しく見えているだけで、結局は、昔から当たり前のように行われている経済活動に過ぎない。

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